門 第六話

その正論、表面積の広いドヤ顔が透けて見えてて不快

「兎丸ぅ〜釣れたぞ〜ん?」

「ダメだー!全然針が魚にぶつからねぇ!」

兎丸達は魚を捕まえようと空に向かって釣竿を振り回していた

「網とかの方が良かったぞんねぇ」

「兄ちゃんお腹減ったぞん」

「そうぞんな、疲れたし休憩するぞん」

山目兄はぶら下げていたクーラーボックスから干し肉を取り出し、山目弟と兎丸に渡す

「アイツら戻ってこねぇな」

「時間かかってるぞんなぁ」

「俺らも行った方がよかったんじゃね?」

「う〜ん…もう少し待ってみるぞん!」

「肉うんめぇぞん!」

「ん?あれ何だ?」

雲の切れ目から何か見えた
でっかい魚か?

「何かいたぞん?」

まぁいいか…

「いや、何でもない」

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「キリ無いわ…」

ため息をつく錐男の背後を狙い、一体のマリモが飛びかかってくる。

錐男は武器である鉄製の棒を回転させ、マリモの頭部に一撃を喰らわせた。

「倫子〜調子どうや〜」

「元気もりもり」

倫子は襲ってくるマリモに対し殴る蹴るで対抗。
ずっと動き続けているにも関わらず倫子は息切れひとつしていなかった。

「いつ見てもパワフルやなぁ」

とは言え…ずっとこのままって訳にはいかんしな。

「隙を見て兎丸くんたち連れてきてや。これ門閉じんと終わらんで」

「わかった」

「その間にコイツらの数出来るだけ減らしとくわ」

「了解」

「うっし!頑張ろか!」

錐男が棒を構え直したその時、頭上から何か降りてきた。

「あれ〜?先約がいるじゃないの〜」

「…!?」

それは巨大な龍だった。
ゆっくりと水面に頭を垂らし、そこから誰かが降りてきた。

「門はまだあんだろぉなぁ。閉じられてたらアンタのせいだぜ、旦那ぁ」

「知るか」

「アンタが出る前に寄り道なんかすっからだろぉ?」

「ここまで運んでやったんだ。それだけでも感謝してほしいくらいだ」

「あ〜ん?まぁいいや。終わるまで上で待っててよ」

龍はまた上空へ戻って行った

「お前何もんや」

「あぁ〜?おめぇこそ誰よ」

「俺らは紅松家直属守衛団の者や。ここはうちらの管轄やぞ。余所者は出て行かんかい」

「あぁ守衛団か…。門はまだ閉じてねぇよな?」

「だったら何や」

「ここの門、俺に譲れ。邪魔すんなら殺すぜぇ」

「ふざけろ」

錐男は男へ向かい飛び出す
頭を狙い、勢いよく棒を振り下ろした。

男はそれを腕で防ぐ

「いてぇ〜」

錐男はそのまま足を狙うが、後ろへ飛んで逃げられる

「お前あれだな?棒術ってやつだろ」

「だったら何やねん」

「いや〜別に〜。知り合いにも似たのいたなぁってだけ」

「そぉかい。今から同窓会でもしに行けや」

追撃
相手に攻撃させる隙を与えぬよう連撃を繰り出す

「イテテテテ」

攻撃を後ろに下がりつついなす男。
錐男の目的はダメージを与えることでなく、ある位置へと誘導することだった。

「倫子!!!」

倫子は渾身の力で男の背中を拳で撃ち抜いた

「ぐっはぁ!!!」

やったか…?

ガッ!
棒の先を掴まれる

「なるほどねぇ。速いだけの攻撃かと思ったら、コイツがいる所まで誘導してたのか」

…コイツ!なんつー力や

「俺、写楽って言うんだ。よろしく…ねっ!」

写楽は棒を掴んだ腕を思い切り振り回し、錐男を後方へ投げ飛ばした。

「嘘やろ…!」

その勢いのまま、今度は倫子に襲いかかる

なんやあの姿…異能か?

写楽の額には角が生え、身体も赤黒く変色している。

鬼みたいな見た目しやがって…
あのパワー反則やろ…!

「クソっ!」

受身を取り、すぐに倫子の元へ駆け寄り加勢する。
マリモ達は突如始まった敵たちの闘争を見守っているのか動かない。

「あっはっはぁ!楽しいなぁ!!」

「楽しくない」

「お前友達おらんやろ」

「学級日誌でだけハシャいでろ」

「あはははははははは!!!」

写楽は2人の攻撃をいなしながらある物に気がつく

「お?なにこれ」

アカン!

「この花…邪魔だなぁ」

写楽は蓮の花を掴み、引っこ抜こうとした

「あ?んぅっ!!!抜けねぇ!」

まるで抜かれることを抵抗するかのように蓮の花は力強く根を張っている

そして、先程まで静観を続けていたマリモ達が再び動き出し、3人を襲いだした

「おぉ?!なんだぁ?!!」

チィ!!面倒なことしてくれよって!
しかし…あの花抜くこともできんのか…
となるとやっぱり…

錐男はマリモを撃退しつつ周辺を見渡し、呟いた

「さっすが…早い判断や…」

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「上からさ、網投げた方が採れんじゃねぇ?」

兎丸達はまだ魚を捕まえようとしていた

「網ないぞん」

「分かってたら持って来たのになぁ」

「網が欲しいの?」

「う〜ん…あったらなぁ」

「はい」

「お?あんじゃんか網!早く出せよなぁ!…誰だお前!」

見知らぬ少年が隣に立っていた。
この網も少年が渡してくれたらしい。

「兎丸、兎丸?」

「なんだよ」

「さすがに失礼ぞん」

「あ、ごめん」

「ふふ…大丈夫だよ」

「網ありがとぞん。お前誰ぞん」

「俺と変わんなくね?」

「ねぇ、あれ。チャンスじゃない?」

少年が指さす方向を見ると魚の群れが水面近くまで降りてきていた

「ホントだ!行くぞ!山目兄弟!」

「ぞん!」

「オラはエネルギー不足で無理ぞ〜ん」

「ちょっとくらい飛べんだろ!気合いだ!」

「気合いぞん!」

「ぞ〜ん…」

もらった網を持って魚の群れに突撃する兎丸と山目兄弟を少年は眺めていた

「あれが僕らの子孫たちか…」