門 第八話

顔面におちょこをバン!

倭国北部 旧十和田湖

「何の用だ」

スーツ姿の男は振り返り、指で眼鏡を押さえる

「斜陽」

視線の先には、和服を身にまとう黒髪の少女がいた

「そろそろ時間よ。今日は絶対に参加させるように言われてるの」

「ふん…」

「さ、皆待ってるわ」

2人は湖に張られた結界の中へと入る。

結界内には倭国 旧東北地方を管轄区域としている「北部龍兵」の基地がある。

入口から移動し幹部たちが使用する談話室へ入った。
どうやら既に参加者は全員揃っているようだ。

「遅かったですね。八郎さん」

「…」

北部龍兵は軍隊組織である。
トップである元帥によって統率され、兎丸たち守衛団同様に門の守護と探索を行っている。

「さっさと座りなよ元帥さん」

クスクスと笑う参加者達
彼らからは明らかな軽蔑が見て取れる

以前の北部龍兵であれば考えられない空間であった。

「一体何の用だ」

「おい!」

八郎に対し、体格のいいスキンヘッドの男が声を荒らげる

「何だ」

「元帥だか龍の血だか知らねぇがよ。テメェ調子乗ってんじゃねぇぞ」

「どういう意味だ」

「いつまでも偉そうな態度してっけどな。ここにいるのはテメェの部下じゃねぇんだぜ」

「そんなことは分かっている」

「なら…」

「だが格下を敬う理由もない」

「なんだとぉ!?」

ガタッ!
スキンヘッドの男は勢いよく椅子から立ち上がった

「殺すぞてめぇ!」

「お前ごときが?」

2人は視線を逸らさず殺気をぶつけ合う

「そこまで」

談話室の奥から2人を制止する声が響いた

「ダメだよ駿我くん。八郎さんに失礼です。彼は大事な協力者なんだから」

「…うす」

「すいませんね八郎さん」

2人は視線を外した

「他の皆も北部龍兵の方々に失礼なことしちゃダメだからね」

どの口が言う
何が北部龍兵の方々だ
お前が殆ど殺しただろうが

門 第七話

米粒としゃもじでテニスをしよう。ほら見失った。

「あれ〜?いないな」

「帰っちゃったぞんねぇ?」

「網どうすっかな」

兎丸たちは網を使って無事魚を捕まえ、戻ってきていた

「とりあえず食べるぞん…ペコペコぞん…」

「ん?あれ倫子じゃね?」

倫子がこちらに走ってきてるのが見えた

「おかえりぞ〜ん」

倫子は息を切らしながら言った

「兎丸、一緒に来て」

俺は一瞬迷って言った

「…ヤバめ?」

「ヤバめ」

「oh......」

「this is a ヤバイヤバイtime」

ホントか?

--------------

ガキィッ!

鉄と肉がぶつかり合う

錐男と写楽はマリモ達の相手をしつつ、お互いへ攻撃を続けていた

写楽の拳を棒で防ぎ、返しで一撃を打つ
防御には無関心なのか写楽は避けようとはせず身体で受け止めていた

「こっちは一撃喰らわんように神経注いどんのに…」

「ははぁー!鍛え方が違ぇのよ!」

タフな奴やのぉ…
てかマリモが邪魔やな
しゃあない…

錐男は後ろに大きく飛び、その場から離れた
そしてそのまま後方に下がっていく

「なんだよ逃げんのか」

この辺か?

「掃除や掃除」

錐男は身体を捻り、勢いよく得物を振り抜いた

その瞬間、錐男の前方にいたマリモ達が横一線、真っ二つにされる。

「あ?なんだ?」

写楽は異変を感じ、半歩下がろうとして気がついた。
自身の腹部と腕が切り裂かれている。

「ぐぁぁ!!!いってぇ!」

「あ、すまん。距離ミスったわ」

あの野郎!何をした?!

再び前を向くと、錐男は眼前まで迫っていた

チィ!!!

状況を理解しないまま、繰り出される連撃を身体を丸めて腕で受ける

「どうしたんや、そない丸くなりおって。怖かったら逃げてもええんやで」

「ふざけんな!!!」

防御姿勢を解き、腕を大きく振り開いた



写楽の胴体に赤い線が刻まれる

「楽しみたかってんけどなぁ」

「てめぇ…!」

振り返り、自分の背後に回った錐男の姿を確認する

「1回切ってもうたしもうええわ」

錐男の手には黒い刃を携えた鎌が握られていた

「ほな、さいなら」

首が宙を飛んだ

--------------

「……結構遠いんだな」

「……」

「もしかして、迷ってる?」

「てへ」

俺は山目兄によって半分ほどの大きさに変えられていた。
そんな俺を倫子は小脇に抱えて走っていた。

「しょうがない…」

倫子は俺を降ろし、腰にぶら下げていた仮面に手をやる

「力を貸してワンポコ」

そう言って倫子は仮面を被った

グルルル…

倫子の髪の毛が逆立つ…
手を水面について四足歩行の格好をしている
まるで獰猛な獣のようだ

「兎丸、背中に乗って」

「わ、わかった」

「飛ばすからしっかり捕まってて」

「りょ、了解!」

怖いよぉ

--------------

錐男は息を吸って深く吐いた

「まだおったんかい」

視線の先には1人の少女
まるで和風人形のような出で立ちをしている

少女の隣には写楽が膝をついて息をしていた

「…斜陽」

「私が助けなきゃ死んでたよ」

「うるせぇ」

アイツの仲間みたいやな
恐らく異能は…

「転移系か」

少女、斜陽が錐男のほうに顔を向けた

「そこのボケと今ワシの足元に転がっとるマリモを入れ替えたんやろ」

錐男は切り離されたマリモの頭部を鎌で突き刺した。

斜陽は錐男に向けてニコりと笑った

「八郎さん」

上空で待機していた龍が再び水面に頭を降ろした。
斜陽はそこへ飛び乗る。

「帰るよ写楽

「顔は覚えたぜ…。じゃあな鎌使い」

写楽と斜陽を乗せた龍は上空へと飛んで行った

「なんやねんアイツら…」

--------------

「きりおー」

「お、やっと来たか。遅いで2人とも」

「悪ぃ!道に迷っちまって」

「迷うて…。倫子、お前…」

「めんご」

倫子は仮面を外しながら謝った

「すげぇなこれ…全部錐男がやったのか?」

来る途中から緑色の人型の何かが倒れまくっていた。
倫子曰く、これはマリモらしい

「まぁそんなとこやな」

コイツ意外と怖いやつなのか…
近づかないどこう

「大変やったんやで〜。なぁんか変な奴が来てなぁ…」

「変な奴?」

「まぁとりあえずいいわこの話は。先に門閉じてまお。マリモが動き出したら面倒や」

「う、うん」

「こっちや」

錐男に連れられた先には1輪の花があった

「この蓮の花、多分これが門や」

蓮ね
なるほどね
アサガオなら知ってるぞ

「えっと…鍵、鍵…」

鞄から取り出した鍵は金色に光っていた

「…間違いないと思う」

「金ピカ」

「よしゃ!じゃ頼むわ」

俺はゆっくりと花に近づき、花の中心に鍵を挿し込む。
すると、上空にあった歪みが揺らぎ花を吸い込んで消えていった。

「任務完了やな」

「おつ」

こうして初めての閉門が終わった

--------------

「そうか…そいつは大変だったな」

門を閉じた俺たちは紅松寺に戻り、ジジイに任務の報告をしていた

「じゃ、ワシらはこれで」

「あぁ、ご苦労だった」

さ、俺も部屋に帰って寝るとしよう。
朝早いんだよ、全くもう。
嫌になっちゃうわねっ!

立ち上がろうとした俺にジジイが声をかけて来た

「おい兎丸」

「ん?」

「お前何もしてねぇな」

「門閉じましたけど?」

「たまには訓練に顔出せ。自分の身くらいは自分で守れるようにな」

「ほーい」

訓練ねぇ…
いつやってんのかも知らねぇや

「毎日やってるから暇な時に稽古場に行きゃいい」

心読まれた…
めんどくせぇけど行ってみるか

「休憩したら行くわ」

そう言って俺はジジイの部屋からそそくさと立ち去った

--------------

「ふぅ…」

兎丸達が居なくなった部屋で頭領は頭を抱えていた

「悩んでるね」

「灯か…」

「兎丸、ちゃんと帰ってきて良かったじゃないか」

「錐男がついてたんだ、そこは心配してねぇよ」

「はは!死神くんか。強いもんね」

灯は楽しそうに笑った

「問題なのは…かち合わせたって言う敵のほうだ」

「ふぅん。どうして?」

「龍だとよ」

「…」

「仲間から八郎って呼ばれてたらしい」

「なるほどね…八郎太郎か。ということは」

「北部龍兵が関わってると見てまず間違いないだろう」

頭領は深いため息をつく
少し俯き、一瞬悲しそうな顔をした

「…年寄には堪える」

頭領は立ち上がる

「まずは偵察からだな」

 

門 第六話

その正論、表面積の広いドヤ顔が透けて見えてて不快

「兎丸ぅ〜釣れたぞ〜ん?」

「ダメだー!全然針が魚にぶつからねぇ!」

兎丸達は魚を捕まえようと空に向かって釣竿を振り回していた

「網とかの方が良かったぞんねぇ」

「兄ちゃんお腹減ったぞん」

「そうぞんな、疲れたし休憩するぞん」

山目兄はぶら下げていたクーラーボックスから干し肉を取り出し、山目弟と兎丸に渡す

「アイツら戻ってこねぇな」

「時間かかってるぞんなぁ」

「俺らも行った方がよかったんじゃね?」

「う〜ん…もう少し待ってみるぞん!」

「肉うんめぇぞん!」

「ん?あれ何だ?」

雲の切れ目から何か見えた
でっかい魚か?

「何かいたぞん?」

まぁいいか…

「いや、何でもない」

--------------

「キリ無いわ…」

ため息をつく錐男の背後を狙い、一体のマリモが飛びかかってくる。

錐男は武器である鉄製の棒を回転させ、マリモの頭部に一撃を喰らわせた。

「倫子〜調子どうや〜」

「元気もりもり」

倫子は襲ってくるマリモに対し殴る蹴るで対抗。
ずっと動き続けているにも関わらず倫子は息切れひとつしていなかった。

「いつ見てもパワフルやなぁ」

とは言え…ずっとこのままって訳にはいかんしな。

「隙を見て兎丸くんたち連れてきてや。これ門閉じんと終わらんで」

「わかった」

「その間にコイツらの数出来るだけ減らしとくわ」

「了解」

「うっし!頑張ろか!」

錐男が棒を構え直したその時、頭上から何か降りてきた。

「あれ〜?先約がいるじゃないの〜」

「…!?」

それは巨大な龍だった。
ゆっくりと水面に頭を垂らし、そこから誰かが降りてきた。

「門はまだあんだろぉなぁ。閉じられてたらアンタのせいだぜ、旦那ぁ」

「知るか」

「アンタが出る前に寄り道なんかすっからだろぉ?」

「ここまで運んでやったんだ。それだけでも感謝してほしいくらいだ」

「あ〜ん?まぁいいや。終わるまで上で待っててよ」

龍はまた上空へ戻って行った

「お前何もんや」

「あぁ〜?おめぇこそ誰よ」

「俺らは紅松家直属守衛団の者や。ここはうちらの管轄やぞ。余所者は出て行かんかい」

「あぁ守衛団か…。門はまだ閉じてねぇよな?」

「だったら何や」

「ここの門、俺に譲れ。邪魔すんなら殺すぜぇ」

「ふざけろ」

錐男は男へ向かい飛び出す
頭を狙い、勢いよく棒を振り下ろした。

男はそれを腕で防ぐ

「いてぇ〜」

錐男はそのまま足を狙うが、後ろへ飛んで逃げられる

「お前あれだな?棒術ってやつだろ」

「だったら何やねん」

「いや〜別に〜。知り合いにも似たのいたなぁってだけ」

「そぉかい。今から同窓会でもしに行けや」

追撃
相手に攻撃させる隙を与えぬよう連撃を繰り出す

「イテテテテ」

攻撃を後ろに下がりつついなす男。
錐男の目的はダメージを与えることでなく、ある位置へと誘導することだった。

「倫子!!!」

倫子は渾身の力で男の背中を拳で撃ち抜いた

「ぐっはぁ!!!」

やったか…?

ガッ!
棒の先を掴まれる

「なるほどねぇ。速いだけの攻撃かと思ったら、コイツがいる所まで誘導してたのか」

…コイツ!なんつー力や

「俺、写楽って言うんだ。よろしく…ねっ!」

写楽は棒を掴んだ腕を思い切り振り回し、錐男を後方へ投げ飛ばした。

「嘘やろ…!」

その勢いのまま、今度は倫子に襲いかかる

なんやあの姿…異能か?

写楽の額には角が生え、身体も赤黒く変色している。

鬼みたいな見た目しやがって…
あのパワー反則やろ…!

「クソっ!」

受身を取り、すぐに倫子の元へ駆け寄り加勢する。
マリモ達は突如始まった敵たちの闘争を見守っているのか動かない。

「あっはっはぁ!楽しいなぁ!!」

「楽しくない」

「お前友達おらんやろ」

「学級日誌でだけハシャいでろ」

「あはははははははは!!!」

写楽は2人の攻撃をいなしながらある物に気がつく

「お?なにこれ」

アカン!

「この花…邪魔だなぁ」

写楽は蓮の花を掴み、引っこ抜こうとした

「あ?んぅっ!!!抜けねぇ!」

まるで抜かれることを抵抗するかのように蓮の花は力強く根を張っている

そして、先程まで静観を続けていたマリモ達が再び動き出し、3人を襲いだした

「おぉ?!なんだぁ?!!」

チィ!!面倒なことしてくれよって!
しかし…あの花抜くこともできんのか…
となるとやっぱり…

錐男はマリモを撃退しつつ周辺を見渡し、呟いた

「さっすが…早い判断や…」

--------------

「上からさ、網投げた方が採れんじゃねぇ?」

兎丸達はまだ魚を捕まえようとしていた

「網ないぞん」

「分かってたら持って来たのになぁ」

「網が欲しいの?」

「う〜ん…あったらなぁ」

「はい」

「お?あんじゃんか網!早く出せよなぁ!…誰だお前!」

見知らぬ少年が隣に立っていた。
この網も少年が渡してくれたらしい。

「兎丸、兎丸?」

「なんだよ」

「さすがに失礼ぞん」

「あ、ごめん」

「ふふ…大丈夫だよ」

「網ありがとぞん。お前誰ぞん」

「俺と変わんなくね?」

「ねぇ、あれ。チャンスじゃない?」

少年が指さす方向を見ると魚の群れが水面近くまで降りてきていた

「ホントだ!行くぞ!山目兄弟!」

「ぞん!」

「オラはエネルギー不足で無理ぞ〜ん」

「ちょっとくらい飛べんだろ!気合いだ!」

「気合いぞん!」

「ぞ〜ん…」

もらった網を持って魚の群れに突撃する兎丸と山目兄弟を少年は眺めていた

「あれが僕らの子孫たちか…」

門 第五話

友達から聞いたグループ内の喧嘩を蠱毒と言ったら怒られた

わー
海だー

俺たちは今第4区画へと来ていた

部屋で寝ていたら山目兄弟に叩き起され
ジジイの所へと連れていかれた

ジジイの部屋には、錐雄(キリオ)と倫子(リンコ)もいた

「昨日の今日で悪いが早速任務だ」

第4区画にて歪みの発生を確認
周辺を探索し、門を発見し次第閉じること

俺達は今、上空から第4区画を見下ろしていた

「アレは海じゃないで。湖や」

「湖…」

「まぁ、でっかい水溜まりみたいなもんやね」

「へぇ…」

き、気まずい〜
あんまり喋ったことないから気まずい〜

多分、歳近いんだけど、この2人と殆ど紅松寺で会わないんだよなぁ

倫子に至っては声も聞いた事ないぞ

「第4区画はほぼこの湖で埋まっとる。空鮫さん曰く、湖の中心部に歪みがある言うてたわ」

「じゃあ、船とか必要だったんじゃ」

「それは大丈夫や。ここは船とかいらんねん」

そうなの?
湖って水だよな
もしかして泳ぐ気?

「一応言うとくと泳ぐ必要もないから」

俺が不思議そうな顔をしていたら錐男は、

「着いたら分かるわ」

と言って、倫子に話しかけ始めた。

「そろそろ着陸するぞーん」

「あいよー」

--------------

紅松寺

「揃ってるな」

頭領は席に座りながらゆっくりと見渡した

「何人かいねぇか」

「任務に出ている者以外は集めました」

「そうか…じゃ、幹部会を始めよう」

そこには鞘や空鮫を含め、守衛団の幹部たちが集まっていた

「最近、妙な噂が流れてきてな」

「どうやら聖域を狙う連中が出てきたらしい」

「聖域…ですか」

「オメェらの中にも門を探す連中と出くわしたやついるだろう」

「狙うってどういうことだよ」

「神になって聖域に行きてぇんだろ」

「そんな無茶な」

幹部たちは鼻で笑う

「まぁ、聖域に行きたがる馬鹿ってのはいつの時代も居た。それ自体は大した問題じゃねぇ。だが問題はその手段だ」

「どんな手段だよ?」

頭領は少し言い淀み、口を開いた

「…神と正門を殺す」

「ハハハッ!!!」

いつ間にか扉の前に灯が立っていた

「歴史は繰り返されるな。なぁ頭領」

「灯…」

--------------

俺たちは湖周辺の陸地へ着陸した

「どっこいぞん」

山目兄が飛行機から降りた
飛行機と言っても1人しか乗れないミニ飛行機だ

「ふぅ〜疲れたぞん」

そう言って山目弟はミニ飛行機から元の姿に戻った。

山目兄に元の大きさに戻してもらってから錐男が話し始めた

「兎丸くん、こっち来てみ」

錐男に呼ばれ、水際まで近づく。

「ここの湖はな、ほれ」

錐男が湖へと飛び込んだ

わ、わんぱくっ!
そう思いながら飛んでくるだろう水飛沫を予想して顔を腕でガードする。
だが水飛沫は上がらなかった。

「凄いやろ」

錐男が水面に立っていた

「ここ、水の上に立てんねん」

「ま、マジか」

「大マジや。普通の地面とほぼ変わらん。逆を言うと潜ったりとか泳いだりは出来へんで」

「す、すげぇ…」

恐る恐る俺も水の上に立ってみた
少しだけ揺れてる…

「さてと…兎丸くんも驚かせたし、そろそろ行こか。倫子!準備できたかぁ?」

「うん」

振り返ると倫子が立っていた。
腰の辺りに仮面がぶら下がっている。

「あの仮面、気になるやろ」

「え?あぁ、何の仮面?」

「ワンポコ」

「わんぽこ?」

「昔、倫子と一緒に暮らしてた犬。その骨でできてきる仮面や」

「骨?」

「ワシはホントに犬なんか疑っとるがな」

「ワンポコは犬」

ほ、骨…

「じゃ、兎丸くんと山目兄弟はここで待っといてや」

「「了解ぞーん」」

「え?いいのか?」

「向こうに何があるか分からんしなぁ。そんなとこに次期頭領を連れていけんやろ」

「私たちが見てくる」

「いやでも」

「大丈夫や。なんか見つけたら呼びに戻ってくるわ」

そう言って錐男と倫子は湖の奥へと歩いていってしまった

「いい人たちだ…」

行かずにすんでラッキー

「錐男たちが戻ってくるまで何か食べるぞん!」

「ぞーん!」

確かに腹減ったな
戻ってきた時に食べれるようアイツらの分も準備してやろう

--------------

「魚」

「おぉ〜仰山飛んどるなぁ」

湖の上空には大漁の魚達が群れを成して飛んでいる。
錐男達は時折飛んでくる魚を叩き落としながら先へと進んでいた。

「あれマグロちゃう?」

「速い」

「帰りに採れたら採ってこか」

「うん」

しばらく歩いていると湖の上に何かが転がっているのが見え、立ち止まる

「なんやあれ?ボールか?」

それは緑色の球体でバスケットボールほどの大きさがありそうだ

「マリモ…」

「あぁマリモか!さっすが倫子、物知りやなぁ」

まりもっこり…フッ」

「残念な子やなぁ…」

マリモは1つではなく、点々と転がっている。
それらを避けて進んでいくと小さな浮島があった。

「花」

「花やな」

浮島には1輪の花が咲いていた

「これなんて花やっけ」

「…ハス?」

「蓮の花か。綺麗やな」

「お前の方が綺麗だよ…」

「そりゃどうも」

「フッ」

「鼻で笑うんなら言わんといて」

錐男は周辺を見渡す

この花の周りを囲うようにマリモが転がっとる…

「錐男、上」

「あぁ…ここやなぁ」

花の上空に大きな「歪み」が存在していた。
空鮫から報告があった場所で間違いないだろう。

「てことは…門はこれか?」

錐男が花へと手を伸ばすと、周辺のマリモが転がり始めた

「ローリングマリモ…フッ」

「アカン…囲まれてるやん」

錐男たちは大量のマリモに囲まれ、逃げ道を失っていた

「マリモ、踏んでいく?」

「せやな」

マリモを踏んで行こうと足をあげた瞬間、水中から手が飛び出してきた

2人は後ろに飛んでそれを回避する

ザバァ!

マリモ達は一斉に立ち上がった

「マリモって身体あるんや」

「緑…」


門 第四話

お前の話も排水溝に流したい

俺たちは第5区画から紅松寺に戻ってきた

「兎丸、30分後に俺の部屋に来い」

「鞘、空鮫が戻ってきたら話を聞いといてくれ」

「了解」

俺は自分の部屋に戻った。

灯はどこかへ出かけているようだ。

「疲れた…」

ベットに横になると、すぐに山目兄弟が部屋にやってきた

「「ぞんぞん♪」」

「ご機嫌だな」

「今日は牛肉が食べれるぞん♪鞘が仕留めた新鮮な牛だぞん♪」

「そぉか、よかったな」

「食べたら兎丸も元気でるぞん」

「一緒に食べるぞん」

「あぁ、ジジイのとこ行ってから行くよ」

「「待ってるぞーん」」

山目兄弟は小躍りしながら出ていった。
俺もジジイの部屋に行こう

--------------

「ジジイ、来たぜ」

「おぅ、そこ座れや」

俺はジジイの向かいに敷かれた座布団に座る

「早速本題だが…これからお前にも本格的に仕事をやってもらう」

うん…嫌だ…

「俺らは「歪み」を正すために「門」を閉じて回っている。それは「神」を聖域へと帰す為だ」

「和国の各地点にこの紅松寺のような拠点があってな。それぞれが担当された区域内の歪みの調査と門の探索を行っている」

知らなかった…
思ったより大組織なのか?

「協力の要請があればお前にも行ってもらうことになるだろう」

「ジジイじゃダメなの?」

「俺は俺で調べなきゃいけないことがあってな」

「なんだよそれ」

「まだ情報が少なくてな。わかり次第お前にも話すよ」

面倒くさそうだなぁ

「俺もそろそろ歳で引退も近い。お前には早く慣れてもらう必要がある。頼んだぞ」

「わかったよ」

「よし。それじゃこれを渡しとく。これから管理はお前がしろ。無くすんじゃねぇぞ」

ジジイが渡したのは金色の針、「鍵」だった

俺はそれを受け取る。
なんだろう
さっきよりも妙に重く感じた。

--------------

食堂に行くと山目兄弟と空鮫さんがいた

「お〜兎丸。頭領との話は終わったのか〜」

「うん、さっきね。というか空さん俺の事チクったでしょ」

「え〜?チクってなんかねぇよ。結界内にはいないって言っただけ〜」

「チクってんじゃん」

「なんだ文句か?私が悪いのか?あん?」

くっそぉ…
怖いよぉ
ガラ悪いよこの姐さん…

「喧嘩はダメぞん!」

山目兄弟が間に入ってくれた
優しいやつらだ

「そうだぞん!もうこれ以上待てないぞん!牛肉を食いたいぞん!」

食い意地張ったやつらだ

「兎丸のことずって待ってたんだぜコイツら」

「そっか…わりぃ。ありがとな」

「気にするなぞん!食うぞーん!」

山目兄弟は勢いよく飯を食う
空鮫さんはその様子を眺めながら酒を呑んでいる

「平和だねぇ」

「灯」

「兎丸もいっぱい食べなよ。これから頑張ってもらわなきゃいけないからね」

「…お前、ホントに神なの?」

「そうだよ。信じてなかったんだ」

「まぁな」

たまたまこっち(現世)に来たら、帰れなくなっちゃうなんて困ったもんだよ」

「何しに来てたんだ?」

「君らの内輪揉めを止めるためだよ」

「内輪揉め…?」

「ふふ…時間があったら頭領に聞いてごらん」

「なんだよ、今教えろよ」

「頭領が話してないなら、まだ兎丸には早いってことなんだろ」

「あ〜?なんだよ」

「とりあえず今は歪みの修正頑張って」

「ちぇ、わかったよ」

「あ、もしご先祖に会うことがあったらよろしく言っといてよ」

「先祖?どういう」

「じゃね〜」

灯はどこかへ行ってしまった。
なんだよ先祖って。

よく分かんないことばっかりだ

門 第三話

お前が吐いた二酸化炭素とコーラの炭酸の二酸化炭素が一緒だなんて僕は信じない

ウサギが暴れた隙に逃げたはいいけど
アイツらとハグれちまったぜ

「兄ちゃんが捕まったぞん!」

草むらから山目弟が飛び出してきた

「うわビックリしたぁ」

「兎丸!兄ちゃんが!」

「あぁ分かった。とりあえず帰ろう。一回寝て考えよう」

「何言ってるぞん!追いかけて助けるぞん!」

「追いかけるったって何処にいるかも分かんねぇだろ〜」

「それは大丈夫ぞん!こっちぞん!」

「え〜…」

山目弟の後ろを着いて行くと大きな寺が見えた。

「あそこに兄ちゃんがいるぞん」

「でけぇ寺だな…」

「それにウサギもあそこにいるぞん」

「ウサギはどうでもいいよ…」

しっかし…すげぇなここ…
景色もいいし、今度1人でこよう…

そう思ったのも束の間

ドォン!!!!!

物凄い音と共に寺は崩れ去り、中から巨大な骸骨が出現した

「えぇ〜…」

--------------

リーダーと呼ばれた男は迫り来る巨大な腕から逃れつつ考えていた

異能…
恐らくトリガーは黒髪の男の死
思えばあの金髪…必要以上にこちらを挑発していた
やり取りの中で条件を満たしたのだろう
もう少し慎重に動くべきだった

元帥…

せめて、せめて門だけは!

手を伸ばすも虚しく、彼は巨大な手によってなぎ払われた。

--------------

瓦礫の山と倒れている男たちを確認し、金子は声をかける

「はーい、オーケー。もういいよ裏安くーん」

その声を合図に骸骨は瓦礫の中の1点へと吸い込まれて行った

ムクリ…

「オーケーじゃねぇよ」

裏安が瓦礫の中から立ち上がってきた
服はズタボロだが傷は負っていない
先程までの傷も無くなっていた

「あんなに殴られる必要あったのか…」

「しょうがないでしょ〜何の情報もなく潰しちゃう訳にもいかないんだからさ〜」

「そうだけど…で?こっからどうすんの?」

「あ、そうだった!やまめ〜!どこ行ったー!」

モガモガモガ!!!

「ん?」

「あそこから声がする」

2人で瓦礫をどけると山目兄が頭から地面に埋まっていた

「急にビックリしたぞん!!!」

地面から引っこ抜かれた山目兄はプリプリしていた

「悪かったよ〜。そんで?あのウサギは?」

「ここだぞん」

山目兄が手を開くと、そこには小さくなったウサギ男爵がいた

「「ナーイス」」

金子と裏安は拍手した
手の平の上でウサギ男爵も釣られて拍手をする

「ここにいたぞんか」

拍手の音を聞いて山目弟と兎丸がやってきた

「おぉ、山目。揃ったな」

「兎丸じゃん。珍しいねこっちに来るなんて」

「ジジイに無理やりね…」

「はは!そうかそうか〜」

「で?その頭領はどうした。別行動か?」

「いや、来てないけど」

「へ?」

「ジジイは来てないけど」

「…おいおい、じゃどうすんだよ。門見つけたのに鍵なきゃ意味ねぇだろぉよ!」

「ホントに門なのかも分からないぞ」

「それなら心配ないぞん!」

「鍵なら兎丸が持ってるぞん!」

「兎丸が?」

「へ?俺?」

兎丸に視線が集まる。
だが心当たりはなかった

「いやいや知らない知らない!鍵なんて見たこともねぇし!」

「鞄の中に入ってるぞん!」

「この中?」

「光ってるぞ〜ん」

恐る恐る鞄を開ける。
その中には金色に輝く1本の針が入っていた。

「これが…鍵?」

…鍵っていうか針じゃねこれ
尖ってるもんこれ

そんなことを考えている間に金子たちがコソコソと話していた

「頭領が来てなくて兎丸がそれ持ってるってことは…」

「そういうことだろうな…」

「そうぞんなぁ」

「何コソコソ話してんだよ。これ、どうすりゃいいんだよ」

「どうって…早く閉じろよ、門」

「門どこだよ」

「この状況から言ってこれだろ」

裏安は山目兄の手のひらで踊るウサギ男爵を指さした。

「これ…ウサギって言うんだぜ」

「知ってるわ、ナメてんのか」

裏安とウサギだ何だと話していたら山目弟がこちらに向かってくる存在に気がついた

「あれ、鞘さんぞん?」

「ホントだねぇ。お〜い鞘さ〜ん」

金子が手を振る。

少しして鞘さんが合流した。

「お前ら派手にやったなぁ」

「「「裏安がやった」」」

「おい!」

「ははは!まぁ気にすんな」

鞘は兎丸の肩に手を置いた

「兎丸、大変だったか?」

「え?いや、まぁね」

「そうか。じゃ全員移動するぞ」

「どこに?」

「少し行った所にある歪みだ。そこで頭領が待ってる」

ジジイが?

--------------

「おぅ、おめぇら御苦労だったな」

「いえいえ〜」

「で、門はどうだった」

「しっかり手に入れましたよ〜。山目」

「これぞん!」

山目は手を差し出した。
手のひらには寝ているウサギ男爵がいた。

「ほぅ、今回はコイツか。ウサギだな」

「ウサギだぞん」

「よし、じゃ門を閉じよう。異能を解いてくれ」

「はいぞん!」

山目はウサギ男爵を地面に置き、手のひらで覆った。
数秒後、小さくなっていたウサギ男爵が徐々に元のサイズへと戻っていった。

「兎丸、そんなとこでボーッとしてねぇでこっちこい」

「おん…」

「鍵はちゃんと持ってるな?」

「あ、これ…だよな」

兎丸は鞄から金の針を取り出した

「そうだ。それが鍵だ。それで門を閉じる」

鞘さんが俺の傍により耳元で言った

「お前はまだ1度も見たことがなかったろ。よく見ておけ」

「う、うん」

「今回の門はこのウサギだ。鍵の反応から見ても間違いないだろう」

頭領は兎丸から受け取った鍵を指で回しながら、ウサギ男爵の前に立った

「いいか兎丸。我ら一族が守護するのは聖域へと続く門。そしてその鍵」

「この鍵は神の所有物だ。聖域に繋ぐ通行証みたいなもんで、本来は神じゃなきゃ持ってても意味はねぇ。普通の人間がこれを使っても門は開けんし何も起こらん」

「だが、門番の一族は違う」

「人間の中で俺ら一族だけが鍵を使用して門の開閉を行える。聖域には繋がらんがな」

「で、これが」

頭領は横たわって寝ているウサギ男爵の心臓に金の針を突き刺した

「その方法だ」

「歪み」周辺の空間が揺れる。
ウサギ男爵は歪みに飲み込まれ、そのまま歪みは消えてしまった

あっけに取られているとジジイは言った

「これが俺たちの仕事だ」

門 第二話

「」のつけ方は人次第

「そろそろ着いてもいいはずぞんねぇ」

「また和国の地形が変わったかもしれないぞん」

「そんな簡単に地形とか変わらないだろ」

和国とは!

かつて日本と呼ばれた土地のことである!
現在は大きく7つに区分されおり、
その内の1区域を守衛団が管理しているぞ!

「「歪み」のせいでそれまでの常識なんてものは意味がなくなったぞん」

「生態系や気温、それに物理法則とかにまで影響して、まともに生活なんて出来なかったらしいぞんよ」

「へぇ」

「外界とも遮断されちゃって強制鎖国なんて言われてるぞんな」

「はぁ…」

「数年経って生物たちも環境に適用し始めて、その結果、人間じゃあ太刀打ちできない化け物たちが生まれたぞんねぇ」

「化け物って?」

「さっき見たウサギ男爵とか」

「呼んだかい?」

木の影からウサギ男爵が顔を出した。
なんだコイツ…ずっと居たのか?

「あ!ウサギぞん!」

ウサギ男爵と山目兄弟の追いかけっこを眺める。

「歪み」による影響か…
図鑑に載ってたあのウサギがアレになるんだもんな…
そう考えると恐ろしいなぁ

「あ!そうだ!こんなことをしてる場合ではないのだ」

ウサギ男爵が急に立ち止まったせいで
山目兄弟は玉突き事故を起こして転げていた。

「先程変な連中に襲われてな。逃げてきたんだった」

「変な連中?お前より変なの?」

「あぁ…私より変だ」

「それは大変だ。山目、逃げよう」

パァン

聞き慣れない音に身が竦む

「なんだ?!」

「こっちくるぞん!」

いつ間にか立ち上がっていた山目兄弟に手を引かれ草むらへ飛び込んだ

「なんだ今のスゲェ音」

「あれは鉄砲ぞん」

「鉄砲…!?」

「私を追ってきた連中のだな」

「なんでそんな連中に追われてんだよ!」

「急に襲いかかってきたから2,3人蹴散らしたのが良くなかったな。うん」

「ちょ…巻き添いじゃん…。行ってこいよ、あっち行って謝ってこいよ」

「何を言う!死んでしまうぞ!」

「大丈夫だよ!軽く撃たれたら許してくれるって!頭に2,3発で許してくれるって!」

「許されてないではないか!死ぬではないか!」

「おい!押すな!なんで俺を押すんだよ!」

「頼む!代わりに撃たれてきてくれ少年!」

「ふざけんな!何の代わりだ!」

「返すから!ちゃんと借りは返すから!線香あげるから!」

「それ死んでんだろーが!!!」

ウサギ男爵と取っ組み合いになった。
こいつ力強いな!

「ちょ…山目…何黙ってんだよ!助けてくれ!…ん?どうした」

山目兄弟を見ると真剣な顔をしてこっちを見ていた

「兎丸…今日、頭領から何か渡されたぞん?」

「え?あ、あぁそういや何か渡されたな」

俺はジジイに渡された鞄に手を伸ばす。
その時気がついた。
鞄から薄く金の光が漏れている。

「なんだこれ…」

「兎丸…その中身って…」

パァン!

「お前ら動くなよ。そのウサギ、こっちに渡してもらおう」

--------------

「リーダー。門を捕まえたそうです」

「そうか。ここに連れてくるよう伝えろ」

「はい」

「りーだー!!リーダーはリーダーって呼ばれてんのか!あっはぁ!!!それ苗字!?なまえぇ?グゥふ!」

あ〜あ、裏安のやつ殴れすぎてテンション上がってきちゃったよ
門捕まえたって聞こえたけど鍵無しでどうやって見つけたんだろう…

予備情報でもあったのかな?

「お!鼻血だ!金子!ほら鼻血!!!」

うん…うるさいな

「リーダー、アイツうるさいから口縛っといてよ」

「お前…仲間じゃないのか」

「いやぁそうなんだけどさ、うるさいの嫌いなんだよねぇ」

「…」

「あ、でもまだ殺さないでね〜」

門がここまで来てくれるなら都合がいい。
けど、今裏安が殺されるのはタイミングが悪い。

「リーダー…門と一緒に3人のガキを捕まえたそうなんですが」

「ガキ?」

「見た目がそっくりな2人と普通のガキだそうです」

「見た目がそっくり…異能持ちか?」

「それはまだ…」

「そうか」

見た目がそっくり…山目兄弟か?
やっと来たのかあのマスコット達!待ちくたびれたぞ!
あとはタイミングだけだ。

暫くすると外で見張りをしていたのであろう男が入ってきた。

「戻ってきました。下に来てます」

「思ったより早かったな。負傷者はいないか」

「いません」

「ならいい。連れてくるのを手伝ってやれ」

「はい!」

さぁ頼むぜ山目兄弟

「ほら!入れ!」

「oh......」

手を拘束されたウサギ男爵が部屋に入ってきた

(ウサギだ)

(ウサギ…)

(ウサギか?)

(ウサギだな)

(え?ウサギ?)

「ウサギだぁ!!!」

ウサギ男爵の後に山目兄が入ってきた
山目兄は部屋の中を見て叫んだ

「金子!」

「こいつらの仲間か」

リーダーと呼ばれた男は振り返る。

「分かってるね〜?やーまーめー」

金子はいつ間にか裏安の隣に立っていた。
先程まで彼の自由を奪っていた拘束具も見当たらない。
それどころか銃まで手にしていた。

(あの銃はウチの部隊のものだ。いつの間に?)

マズイ!
再び拘束しようと接近を試みたがすぐに動きを止めた

(何をしている?)

金子は銃口を裏安に向けていた。

「じゃ、よろしく〜」

「あ?」

パンッ!

金子が撃った弾丸は裏安の頭を撃ち抜いた。

数回、反動で地面に頭がバウンドする。
その場にいた全員がその光景に見入っていた。

その数秒後、彼らのいた旧清水寺は崩壊し瓦礫の山となった