門 第八話

顔面におちょこをバン!

倭国北部 旧十和田湖

「何の用だ」

スーツ姿の男は振り返り、指で眼鏡を押さえる

「斜陽」

視線の先には、和服を身にまとう黒髪の少女がいた

「そろそろ時間よ。今日は絶対に参加させるように言われてるの」

「ふん…」

「さ、皆待ってるわ」

2人は湖に張られた結界の中へと入る。

結界内には倭国 旧東北地方を管轄区域としている「北部龍兵」の基地がある。

入口から移動し幹部たちが使用する談話室へ入った。
どうやら既に参加者は全員揃っているようだ。

「遅かったですね。八郎さん」

「…」

北部龍兵は軍隊組織である。
トップである元帥によって統率され、兎丸たち守衛団同様に門の守護と探索を行っている。

「さっさと座りなよ元帥さん」

クスクスと笑う参加者達
彼らからは明らかな軽蔑が見て取れる

以前の北部龍兵であれば考えられない空間であった。

「一体何の用だ」

「おい!」

八郎に対し、体格のいいスキンヘッドの男が声を荒らげる

「何だ」

「元帥だか龍の血だか知らねぇがよ。テメェ調子乗ってんじゃねぇぞ」

「どういう意味だ」

「いつまでも偉そうな態度してっけどな。ここにいるのはテメェの部下じゃねぇんだぜ」

「そんなことは分かっている」

「なら…」

「だが格下を敬う理由もない」

「なんだとぉ!?」

ガタッ!
スキンヘッドの男は勢いよく椅子から立ち上がった

「殺すぞてめぇ!」

「お前ごときが?」

2人は視線を逸らさず殺気をぶつけ合う

「そこまで」

談話室の奥から2人を制止する声が響いた

「ダメだよ駿我くん。八郎さんに失礼です。彼は大事な協力者なんだから」

「…うす」

「すいませんね八郎さん」

2人は視線を外した

「他の皆も北部龍兵の方々に失礼なことしちゃダメだからね」

どの口が言う
何が北部龍兵の方々だ
お前が殆ど殺しただろうが