門 第二話

「」のつけ方は人次第

「そろそろ着いてもいいはずぞんねぇ」

「また和国の地形が変わったかもしれないぞん」

「そんな簡単に地形とか変わらないだろ」

和国とは!

かつて日本と呼ばれた土地のことである!
現在は大きく7つに区分されおり、
その内の1区域を守衛団が管理しているぞ!

「「歪み」のせいでそれまでの常識なんてものは意味がなくなったぞん」

「生態系や気温、それに物理法則とかにまで影響して、まともに生活なんて出来なかったらしいぞんよ」

「へぇ」

「外界とも遮断されちゃって強制鎖国なんて言われてるぞんな」

「はぁ…」

「数年経って生物たちも環境に適用し始めて、その結果、人間じゃあ太刀打ちできない化け物たちが生まれたぞんねぇ」

「化け物って?」

「さっき見たウサギ男爵とか」

「呼んだかい?」

木の影からウサギ男爵が顔を出した。
なんだコイツ…ずっと居たのか?

「あ!ウサギぞん!」

ウサギ男爵と山目兄弟の追いかけっこを眺める。

「歪み」による影響か…
図鑑に載ってたあのウサギがアレになるんだもんな…
そう考えると恐ろしいなぁ

「あ!そうだ!こんなことをしてる場合ではないのだ」

ウサギ男爵が急に立ち止まったせいで
山目兄弟は玉突き事故を起こして転げていた。

「先程変な連中に襲われてな。逃げてきたんだった」

「変な連中?お前より変なの?」

「あぁ…私より変だ」

「それは大変だ。山目、逃げよう」

パァン

聞き慣れない音に身が竦む

「なんだ?!」

「こっちくるぞん!」

いつ間にか立ち上がっていた山目兄弟に手を引かれ草むらへ飛び込んだ

「なんだ今のスゲェ音」

「あれは鉄砲ぞん」

「鉄砲…!?」

「私を追ってきた連中のだな」

「なんでそんな連中に追われてんだよ!」

「急に襲いかかってきたから2,3人蹴散らしたのが良くなかったな。うん」

「ちょ…巻き添いじゃん…。行ってこいよ、あっち行って謝ってこいよ」

「何を言う!死んでしまうぞ!」

「大丈夫だよ!軽く撃たれたら許してくれるって!頭に2,3発で許してくれるって!」

「許されてないではないか!死ぬではないか!」

「おい!押すな!なんで俺を押すんだよ!」

「頼む!代わりに撃たれてきてくれ少年!」

「ふざけんな!何の代わりだ!」

「返すから!ちゃんと借りは返すから!線香あげるから!」

「それ死んでんだろーが!!!」

ウサギ男爵と取っ組み合いになった。
こいつ力強いな!

「ちょ…山目…何黙ってんだよ!助けてくれ!…ん?どうした」

山目兄弟を見ると真剣な顔をしてこっちを見ていた

「兎丸…今日、頭領から何か渡されたぞん?」

「え?あ、あぁそういや何か渡されたな」

俺はジジイに渡された鞄に手を伸ばす。
その時気がついた。
鞄から薄く金の光が漏れている。

「なんだこれ…」

「兎丸…その中身って…」

パァン!

「お前ら動くなよ。そのウサギ、こっちに渡してもらおう」

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「リーダー。門を捕まえたそうです」

「そうか。ここに連れてくるよう伝えろ」

「はい」

「りーだー!!リーダーはリーダーって呼ばれてんのか!あっはぁ!!!それ苗字!?なまえぇ?グゥふ!」

あ〜あ、裏安のやつ殴れすぎてテンション上がってきちゃったよ
門捕まえたって聞こえたけど鍵無しでどうやって見つけたんだろう…

予備情報でもあったのかな?

「お!鼻血だ!金子!ほら鼻血!!!」

うん…うるさいな

「リーダー、アイツうるさいから口縛っといてよ」

「お前…仲間じゃないのか」

「いやぁそうなんだけどさ、うるさいの嫌いなんだよねぇ」

「…」

「あ、でもまだ殺さないでね〜」

門がここまで来てくれるなら都合がいい。
けど、今裏安が殺されるのはタイミングが悪い。

「リーダー…門と一緒に3人のガキを捕まえたそうなんですが」

「ガキ?」

「見た目がそっくりな2人と普通のガキだそうです」

「見た目がそっくり…異能持ちか?」

「それはまだ…」

「そうか」

見た目がそっくり…山目兄弟か?
やっと来たのかあのマスコット達!待ちくたびれたぞ!
あとはタイミングだけだ。

暫くすると外で見張りをしていたのであろう男が入ってきた。

「戻ってきました。下に来てます」

「思ったより早かったな。負傷者はいないか」

「いません」

「ならいい。連れてくるのを手伝ってやれ」

「はい!」

さぁ頼むぜ山目兄弟

「ほら!入れ!」

「oh......」

手を拘束されたウサギ男爵が部屋に入ってきた

(ウサギだ)

(ウサギ…)

(ウサギか?)

(ウサギだな)

(え?ウサギ?)

「ウサギだぁ!!!」

ウサギ男爵の後に山目兄が入ってきた
山目兄は部屋の中を見て叫んだ

「金子!」

「こいつらの仲間か」

リーダーと呼ばれた男は振り返る。

「分かってるね〜?やーまーめー」

金子はいつ間にか裏安の隣に立っていた。
先程まで彼の自由を奪っていた拘束具も見当たらない。
それどころか銃まで手にしていた。

(あの銃はウチの部隊のものだ。いつの間に?)

マズイ!
再び拘束しようと接近を試みたがすぐに動きを止めた

(何をしている?)

金子は銃口を裏安に向けていた。

「じゃ、よろしく〜」

「あ?」

パンッ!

金子が撃った弾丸は裏安の頭を撃ち抜いた。

数回、反動で地面に頭がバウンドする。
その場にいた全員がその光景に見入っていた。

その数秒後、彼らのいた旧清水寺は崩壊し瓦礫の山となった