門 第三話

お前が吐いた二酸化炭素とコーラの炭酸の二酸化炭素が一緒だなんて僕は信じない

ウサギが暴れた隙に逃げたはいいけど
アイツらとハグれちまったぜ

「兄ちゃんが捕まったぞん!」

草むらから山目弟が飛び出してきた

「うわビックリしたぁ」

「兎丸!兄ちゃんが!」

「あぁ分かった。とりあえず帰ろう。一回寝て考えよう」

「何言ってるぞん!追いかけて助けるぞん!」

「追いかけるったって何処にいるかも分かんねぇだろ〜」

「それは大丈夫ぞん!こっちぞん!」

「え〜…」

山目弟の後ろを着いて行くと大きな寺が見えた。

「あそこに兄ちゃんがいるぞん」

「でけぇ寺だな…」

「それにウサギもあそこにいるぞん」

「ウサギはどうでもいいよ…」

しっかし…すげぇなここ…
景色もいいし、今度1人でこよう…

そう思ったのも束の間

ドォン!!!!!

物凄い音と共に寺は崩れ去り、中から巨大な骸骨が出現した

「えぇ〜…」

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リーダーと呼ばれた男は迫り来る巨大な腕から逃れつつ考えていた

異能…
恐らくトリガーは黒髪の男の死
思えばあの金髪…必要以上にこちらを挑発していた
やり取りの中で条件を満たしたのだろう
もう少し慎重に動くべきだった

元帥…

せめて、せめて門だけは!

手を伸ばすも虚しく、彼は巨大な手によってなぎ払われた。

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瓦礫の山と倒れている男たちを確認し、金子は声をかける

「はーい、オーケー。もういいよ裏安くーん」

その声を合図に骸骨は瓦礫の中の1点へと吸い込まれて行った

ムクリ…

「オーケーじゃねぇよ」

裏安が瓦礫の中から立ち上がってきた
服はズタボロだが傷は負っていない
先程までの傷も無くなっていた

「あんなに殴られる必要あったのか…」

「しょうがないでしょ〜何の情報もなく潰しちゃう訳にもいかないんだからさ〜」

「そうだけど…で?こっからどうすんの?」

「あ、そうだった!やまめ〜!どこ行ったー!」

モガモガモガ!!!

「ん?」

「あそこから声がする」

2人で瓦礫をどけると山目兄が頭から地面に埋まっていた

「急にビックリしたぞん!!!」

地面から引っこ抜かれた山目兄はプリプリしていた

「悪かったよ〜。そんで?あのウサギは?」

「ここだぞん」

山目兄が手を開くと、そこには小さくなったウサギ男爵がいた

「「ナーイス」」

金子と裏安は拍手した
手の平の上でウサギ男爵も釣られて拍手をする

「ここにいたぞんか」

拍手の音を聞いて山目弟と兎丸がやってきた

「おぉ、山目。揃ったな」

「兎丸じゃん。珍しいねこっちに来るなんて」

「ジジイに無理やりね…」

「はは!そうかそうか〜」

「で?その頭領はどうした。別行動か?」

「いや、来てないけど」

「へ?」

「ジジイは来てないけど」

「…おいおい、じゃどうすんだよ。門見つけたのに鍵なきゃ意味ねぇだろぉよ!」

「ホントに門なのかも分からないぞ」

「それなら心配ないぞん!」

「鍵なら兎丸が持ってるぞん!」

「兎丸が?」

「へ?俺?」

兎丸に視線が集まる。
だが心当たりはなかった

「いやいや知らない知らない!鍵なんて見たこともねぇし!」

「鞄の中に入ってるぞん!」

「この中?」

「光ってるぞ〜ん」

恐る恐る鞄を開ける。
その中には金色に輝く1本の針が入っていた。

「これが…鍵?」

…鍵っていうか針じゃねこれ
尖ってるもんこれ

そんなことを考えている間に金子たちがコソコソと話していた

「頭領が来てなくて兎丸がそれ持ってるってことは…」

「そういうことだろうな…」

「そうぞんなぁ」

「何コソコソ話してんだよ。これ、どうすりゃいいんだよ」

「どうって…早く閉じろよ、門」

「門どこだよ」

「この状況から言ってこれだろ」

裏安は山目兄の手のひらで踊るウサギ男爵を指さした。

「これ…ウサギって言うんだぜ」

「知ってるわ、ナメてんのか」

裏安とウサギだ何だと話していたら山目弟がこちらに向かってくる存在に気がついた

「あれ、鞘さんぞん?」

「ホントだねぇ。お〜い鞘さ〜ん」

金子が手を振る。

少しして鞘さんが合流した。

「お前ら派手にやったなぁ」

「「「裏安がやった」」」

「おい!」

「ははは!まぁ気にすんな」

鞘は兎丸の肩に手を置いた

「兎丸、大変だったか?」

「え?いや、まぁね」

「そうか。じゃ全員移動するぞ」

「どこに?」

「少し行った所にある歪みだ。そこで頭領が待ってる」

ジジイが?

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「おぅ、おめぇら御苦労だったな」

「いえいえ〜」

「で、門はどうだった」

「しっかり手に入れましたよ〜。山目」

「これぞん!」

山目は手を差し出した。
手のひらには寝ているウサギ男爵がいた。

「ほぅ、今回はコイツか。ウサギだな」

「ウサギだぞん」

「よし、じゃ門を閉じよう。異能を解いてくれ」

「はいぞん!」

山目はウサギ男爵を地面に置き、手のひらで覆った。
数秒後、小さくなっていたウサギ男爵が徐々に元のサイズへと戻っていった。

「兎丸、そんなとこでボーッとしてねぇでこっちこい」

「おん…」

「鍵はちゃんと持ってるな?」

「あ、これ…だよな」

兎丸は鞄から金の針を取り出した

「そうだ。それが鍵だ。それで門を閉じる」

鞘さんが俺の傍により耳元で言った

「お前はまだ1度も見たことがなかったろ。よく見ておけ」

「う、うん」

「今回の門はこのウサギだ。鍵の反応から見ても間違いないだろう」

頭領は兎丸から受け取った鍵を指で回しながら、ウサギ男爵の前に立った

「いいか兎丸。我ら一族が守護するのは聖域へと続く門。そしてその鍵」

「この鍵は神の所有物だ。聖域に繋ぐ通行証みたいなもんで、本来は神じゃなきゃ持ってても意味はねぇ。普通の人間がこれを使っても門は開けんし何も起こらん」

「だが、門番の一族は違う」

「人間の中で俺ら一族だけが鍵を使用して門の開閉を行える。聖域には繋がらんがな」

「で、これが」

頭領は横たわって寝ているウサギ男爵の心臓に金の針を突き刺した

「その方法だ」

「歪み」周辺の空間が揺れる。
ウサギ男爵は歪みに飲み込まれ、そのまま歪みは消えてしまった

あっけに取られているとジジイは言った

「これが俺たちの仕事だ」